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臨床での活用漢方で治そう

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痛みの漢方治療

痛みの漢方治療

 痛みには様々な種類・病因がありますが、ここでは臨床的によく遭遇する「筋肉痛」について解説します。
 鎮痛に用いる漢方薬は、血流を改善させる方剤、冷えを改善させる方剤、鎮痛成分を含む方剤(附子剤)に分類できます。これらの方剤を、病態や痛みの状態に応じて単独、あるいは併用して用います。
 痛みの中でも特に重要なのが、血の異常によって起こる痛みです。ある組織の血流量が通常より減少した状態を血虚といいます。血虚は生命にとって重大であるため、その痛みは鋭い痛みとして認識されます。一方、打撲などで充血した状態を瘀血といい、痛みは弱く鈍痛になります。血の異常を改善する方剤は、血虚の場合には四物湯で、瘀血の場合には桂枝茯苓丸などが代表的です。

痛みの漢方

 さらに、筋肉の痛みは骨格筋と平滑筋に分けて、以下のような方剤が用いられます。

1) 骨格筋の痛みに有効な処方
  1. 疎経活血湯:
    腰痛などの体幹や四肢の骨格筋の痛みに有効です。四物湯を含む方剤で、構成生薬には利水効果のある生薬、血の異常を改善する生薬、鎮痛効果のある生薬が含まれます。
  2. 八味丸:
    内臓機能や腰部周囲の筋組織の筋力低下(腎虚)による腰痛に有効です。とくに、腰がだるく重い感じがあり、腰から下肢まで痛くなり、歩くとすぐ疲れて足が弱くなったという場合に用います。附子を増量することが多い処方です。
  3. 葛根湯
    肩こりや項頸部痛の場合に、僧帽筋の血流の循環を改善して項背部の痛みを改善します。附子剤、補血剤や駆瘀血剤の併用も有効です。
2) 平滑筋の痛みに効果を認める処方
  1. 桂枝加芍薬湯
    腹痛は消化管の蠕動運動の不和からガスが蓄積される結果、腸管が拡張するために痛みが生じます。これに対して芍薬の平滑筋弛緩作用が鎮痛効果を示します。生理時の腹痛にも有効な処方です。
3) 骨格筋、平滑筋の両方に有効な処方
  1. 芍薬甘草湯
    骨格筋の場合は腓腹筋の痙攣(こむら返り)に使用されます。また、しゃっくりは骨格筋である横隔膜の痙攣であるので本剤が効果を示すこともあります。
    平滑筋の場合は腹痛に有効です。胃痛(胃痙攣など)、胆石症や尿管結石の発作時によく投与され、多くは頓服で用います。鎮痛効果は比較的速く認められます。
    また、これは生理痛にも用いられる処方です。生理痛は腰痛なのか腹痛なのか区別がつきにくい場合があるため、桂枝加芍薬湯が無効な時には本剤が有効です。生理開始2日前位から生理中に服用するとよいでしょう。
4) 単独で効果が得られない場合の対処法
  1. 附子の追加や増量、駆瘀血剤、補血剤の併用を工夫するとよいでしょう。
    たとえば八味丸の場合、含まれている附子を増量する方法、駆瘀血剤の代表である桂枝茯苓丸を併用し八味丸合桂枝茯苓丸とする方法、補血剤の代表である四物湯を併用し八味丸合四物湯とする方法があります。桂枝茯苓丸や四物湯は半量でも効果を認めます。

痛みの漢方治療2

 高齢者の増加、運動不足や食べ過ぎによる体重の増加、職場でのストレスなどの理由で腰痛や膝などの関節痛を訴え外来を受診する患者が増えています。それらの多くは変形性腰椎・膝関節症、腰部脊椎管狭窄症、椎間板症、骨粗鬆症など老化に伴う退行性変化によるものであり、ほとんどが手術的療法の対象にならない慢性疼痛です。慢性疼痛は、整形外科的疾患以外に内科的・婦人科的・あるいは精神的な要因が背景にある場合もあり、その病因を明らかにすることが重要です。手術を必要としない慢性疼痛には漢方治療が有効です。今回は腰痛や膝関節症の治療における方剤の使用目標について解説します。

腰痛の漢方治療

 骨の変形などにより神経や血管が圧迫され微小循環障害が生じます。その結果、局所が低酸素状態となりエネルギー産生の低下で浮腫が生じ、さらに神経や血管を圧迫するという悪循環が生じます。これらの病態は漢方的には血虚や瘀血と水滞の併存した病態と考えられます。そこで、補血剤、駆瘀血剤、利水剤を組合せることになります。冷えを認める場合には附子や乾姜などの温薬で冷えの改善も併せて行なっていく必要があります。

  1. 1) 急性期
    実証の場合には越婢加朮湯、麻黄湯麻杏薏甘湯を使います。いずれも麻黄が含まれており、その主成分のエフェドリンなどが急性期の関節痛を和らげます。高齢者や虚証で麻黄が使えない場合には芍薬甘草湯を用い、附子を併用することもあります。芍薬甘草湯は急性期には証に関係なく使用できる処方です。
    下半身に力が入りにくかったり、下腹部が軟弱の場合には八味地黄丸、牛車腎気丸も使用します。証に関係なく痛みに応じて附子を追加増量します。また、痛みが改善しない場合には五苓散桂枝茯苓丸を併用します。
  2. 2) 慢性期
    実証の場合には薏苡仁湯が使われます。この処方に含まれる薏苡仁は疣の特効薬ですが、利水作用があり甘草と一緒に用いることで鎮痛効果を発揮します。
    虚証や高齢者の場合は、体を温めて血液の循環をよくし利水効果のある大防風湯が用いられます。また、下半身の冷えが強く腹部に力のないタイプには、急性期同様に八味地黄丸や牛車腎気丸を使用します。
  3. 3) 女性の腰痛
    女性の腰痛の4分の1は、子宮や卵巣などに起こる婦人科領域の疾患が関係しています。当帰芍薬散桂枝茯苓丸などを使用して原疾患を治療していきます。
膝関節痛
  1. 防已黄耆湯
    膝関節痛の第1選択薬です。水太りを基本にしますが、虚証タイプでも使用できます。関節水がある場合にはさらに五苓散を併用すると改善します。
  2. 防風通聖散
    いわゆる卒中体質で、便秘、肥満を有する膝関節痛患者に用いられます。
  3. 薏苡仁湯
    膝関節に熱感や腫張がある場合に用いられます。人工関節置換術後の熱感のある膝関節痛にも有効です。