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臨床での活用漢方で治そう

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ニキビの漢方治療

ニキビ治療の現状

 ニキビは、皮脂の分泌が盛んな毛穴にアクネ杆菌が繁殖して化膿する病態です。現代医学によるニキビの治療は外用薬が主体となりますが、重症の場合は殺菌を目的として抗生物質が使われます。しかし抗生物質を長く服用し続けることは腸内細菌叢を変化させニキビがなかなか改善しない原因の一つともなり、副作用の出現を最低限に抑えるためにも抗生物質の使用は短期にすべきです。また皮脂を取り除いたり殺菌したりするだけでは容易に再発するニキビに対する根本的な治療とはいえません。

処方の実際

 漢方薬はニキビができにくいように体質を改善させることを目的としています。漢方医学においてニキビは、体内で発生した余分な「熱」が皮膚に影響を与え、そこに外界の熱(風熱)の刺激が加わってできると考えます。そのため、体内のどこに熱がこもっているかを見極め、その熱を取り除き、余分な熱が発生しないように体のバランスを整えることで対処します。
 臓器として関連が深いのは、肺と脾胃(消化管)です。皮膚呼吸と外呼吸の観点から皮膚は肺と関係しています。さらに肺は脾胃や大腸と関係することから、皮膚は消化管と関係するといえます。ニキビに限らず皮膚疾患の治療は、消化管に注目することが重要なコツです。
 実際の治療は、ニキビの色(白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビ)と成長や炎症の度合い、できやすい部位などから判断し、それに見合った漢方薬を服用します。

イラスト ニキビ

  1. 十味敗毒湯
    皮膚の赤みや痒みを発散し、腫れや化膿を抑えます。また、そのようになりやすい体質を改善します。
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  2. 黄連解毒湯
    顔面の赤み、炎症が強い場合のニキビに適応します。
  3. 清上防風湯
    黄連解毒湯と似ていますが脂ぎった感じの強い症例に用います。上半身、特に顔面の熱や炎症を抑える作用が期待できます。きれいな赤色のニキビが多いときに用いられ、ニキビ治療に幅広く使える処方です。
  4. 排膿散及湯
    赤みや腫れを伴った皮膚の化膿症、瘍(よう)、面疔(めんちょう)などに使います。
  5. 当帰芍薬散
    顔色が悪く冷え性で艶がなく隆起もないニキビに処方します。色白で冷え症、やせ型で体力のあまりない人に向く処方です。
  6. 桂枝茯苓丸
    顔面が赤いか、ややくすみのある顔貌で、青黒い感じのするニキビに処方します。生理不順や生理痛、頭痛、めまい、肩こり、のぼせ、足の冷えなどを伴う症例に適応します。
  7. 半夏瀉心湯
    不摂生な食事や胃腸障害を伴い口周を中心にできるニキビに適応します。
  8. 芍薬甘草湯
    ニキビは高アンドロゲン血症が関係していることから、テストステロンの抑制作用が知られている芍薬甘草湯を用いる場合があります。皮脂腺の分泌を減少させアクネ杆菌の増殖を抑えることでニキビを改善します。

 その他、ニキビがなかなか改善しない場合には脾胃の改善を目的に人参湯六君子湯補中益気湯を併用することがあります。