抑肝散加陳皮半夏は抑肝散の加味方の一つです。「抑肝散」は中国明代の保嬰撮要(1556年)という書物に収載された処方で、小児の夜泣きやむずがりなどの小児癇症のために創案された処方です。育児にあたる母親にも配慮する子母同服の記載もあり、成人の神経の高ぶりを抑制する処方としても用いられます。また近年では、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)に対する有効性も報告されています1)。
抑肝散加陳皮半夏は抑肝散に「陳皮」と「半夏」という2つの生薬を加えた日本独自の処方です。陳皮はミカン科ウンシュウミカンの成熟した果皮、半夏はサトイモ科カラスビシャクのコルク層を除いた塊茎で、どちらも悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状を改善する働きがあります2)。このため、抑肝散加陳皮半夏は抑肝散が用いられるような精神神経症状(イライラ、神経質、不眠)に加え、胃腸虚弱体質を有する方に適した処方です。
この特集ページでは、抑肝散加陳皮半夏を処方している臨床医へのインタビューを交えて、抑肝散加陳皮半夏の最新の知見を提供していきます。
図1. 抑肝散加陳皮半夏に配合される生薬と薬能3)