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臨床での活用漢方で治そう

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消化器症状の漢方治療

消化器疾患のタイプ別漢方治療

消化器疾患イラスト

 漢方で消化器を脾胃と呼びますが、これは解剖学的な意味とは違い、消化管の消化吸収機能を生理的にとらえている言葉です。消化吸収がうまくいかないと消化不良が起こり、水分代謝の異常から体内に水分の停滞が出現します。また、消化不良は同時に生命力生成の失調を引き起こし、だるくなる、息切れ、あるいは顔色不良などの症状が現れます。更に生命力が低下してくると、呼吸器の状態が不良になり、風邪をひきやすい、息切れ、汗が出やすいといった症状が起こってきます。
 このように脾胃の機能低下は消化器だけでなく、呼吸器や全身症状の異常につながります。

脾胃の機能低下による症状は次の4つのタイプに分けられます。

  1. (1). 消化管の蠕動運動の低下によるもの
     食欲がなく、軟便ないし下痢となり、顔面蒼白、声に力がなく、四肢倦怠感、脈に力がないなどの症候を呈します。
     改善する処方は人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗の6味より構成される四君子湯があります。さらに四君子湯に半夏、陳皮の2味を加えた六君子湯も頻用されます。四君子湯を基本として加減された処方に参苓白朮散、および補中益気湯があります。参苓白朮散は消化不良や下痢の傾向の著しいものに用います。また補中益気湯は疲労しやすく、全身倦怠感の著しいものに用います。
     同じ食欲不振でも六君子湯は胃の蠕動運動の低下から、食べるとすぐに満腹感になるという食欲不振。補中益気湯は空腹感がなく、食べる気がしないといった食欲不振に用います。
  2. (2).(1)に冷えが加わったもの
     (1)の症状に加えて、四肢の冷感が著しく、冷水をきらい、温かい飲物を好み、ときに腹痛が出現するなどの「冷え」を思わせる症状を呈します。 
     改善する処方は人参、白朮、甘草、乾姜の4味より構成される人参湯があります。冷えの症状のより著しい場合には、人参湯に熱薬である附子を加えた附子理中湯(人参湯加附子)という処方を用います。
  3. (3).(1)に冷えと熱が関係しているもの
     熱による症候として、胸やけ、口臭、口渇、嘔気、舌の白苔、乾燥などが認められ、その一方で寒による症候として四肢の冷感、腹部のグル音、心下部振水音、下痢しやすいなどの症状を呈します。熱と寒の両方の症状がほぼ同じくらいに認められるのが特徴です。
     改善する処方は半夏、乾姜、人参、大棗(温める)、黄連、黄芩(熱を冷ます)、甘草の7味より構成される半夏潟心湯が常用されます。
  4. (4). 消化不良によるもの
     消化障害のために食欲不振、心窩部の不快感、膨満感、悪心、嘔吐、げっぷ、呑酸、全身倦怠感などを呈し、舌に厚い苔を生じて、味覚がにぶくなるといった症状を呈します。
     改善する処方は、蒼朮、厚朴、陳皮、生姜、大棗、甘草の6味より構成される平胃散が用いられます。