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臨床での活用漢方で治そう

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肥満の漢方治療

肥満のタイプ別漢方処方

 最近「漢方薬でやせる薬はないですか」という人が多くなっています。肥満とは「脂肪組織が異常に増加した状態」をいい、この脂肪が増加する原因は①過食による肥満 ②運動不足による肥満 ③炭水化物処理能力の低下や脂肪組織の代謝異常による肥満 ④ホルモンのアンバランスによる肥満があります。①、②は本人の努力に任せることにして今回は③、④を漢方で対処していきます。

 ③の中には太り方のタイプによっていわゆる固太りの肥満である「がっちり型」と、代謝が悪く脂肪が燃えにくいために太る「ぽっちゃり型」に分けられます。

  • 脂肪太り
  • 水太り

 がっちり型の場合、食事を減らし運動をしていれば太らないのに、脂っこい食事・甘いものの過剰摂取に加え、その代謝がうまく行われないために便秘し肥満になります。食べ過ぎで排泄が悪い場合は「防風通聖散」を使って余分なものを排泄する治療を行います。大黄・甘草・芒硝で便通をよくしながら体内に蓄積している老廃物を排泄し、荊芥・当帰・防風で血液の循環をよくし、解毒を行い脂質の代謝をよくします。この処方は、「白色脂肪細胞で脂肪を分解し、褐色脂肪細胞を活性化させて脂肪燃焼を促す」という薬理作用が報告されています。目標は腹部に脂肪が多く便秘傾向でむくみやどうき、肩こり、のぼせなどの高血圧の随伴症状がある場合に使います。
 一方、ぽっちゃり型は食べる量は普通なのに太ってしまうというタイプです。からだの皮膚表面の働きが悪いため水分代謝がうまく行われず体内の水分が停滞し、それがむくみとして現れたり関節に停滞したりします。その結果、水太りの状態になります。このタイプの肥満には元気をつけ、体を温めて消化器の働きをよくし,水分代謝をよくする「防已黄耆湯」を使用します。この漢方薬は色白で疲れやすく、汗かきで筋肉が柔らかい小太りの肥満改善に用います。防已と黄耆は皮膚表面に停滞している水分を取り除き皮膚表面の働きを助けます。生姜は消化器に停滞している水分を温め動きやすくします。白朮・甘草で消化器に滞った水を尿として流すことにより、水分代謝を改善します。

 ④のホルモンアンバランスによる肥満は更年期の女性にみられます。女性の更年期では卵巣の機能低下による女性ホルモンの減少のため脳下垂体が卵巣刺激ホルモンを分泌します。これが視床下部にある食欲中枢に作用して摂食を盛んにします。またこの年代は血の停滞が加わり一層ホルモンバランスを悪くさせます。漢方では女性ホルモンの補充はせず、停滞した血の流れをよくする「桂枝茯苓丸」を使います。桃仁と牡丹皮は停滞していた血の流れを改善し桂枝と茯苓で皮膚表面の新陳代謝を改善します。