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臨床医師へのインタビュー
桂枝茯苓丸料(ケイシブクリョウガンリョウ)を中心に

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インタビュー

林 忍 先生

済生会神奈川県病院、
横浜岡野町クリニック、
上大岡仁正クリニック、
仁厚会病院勤務
林 忍 先生
(インタビュー日:2015年10月8日)

profile

1993年
慶應義塾大学医学部卒業
1993年
慶應義塾大学医学部外科学教室入局
1994年
日野市立病院外科
1995年
川崎市立川崎病院外科
1996年
慶應義塾大学医学部外科学教室帰室
末梢血管外科学を専攻。臨床の傍ら、医化学教室にて細胞防御関連の研究にて医学博士号取得
1999年
済生会神奈川県病院外科
2003年
済生会横浜市東部病院への移転に伴い、心臓血管センター血管外科医長および消化器センター外科医長兼任
2010年
慶應義塾大学外科講師(非常勤)
2011年
外科副部長(血管外科部門長)
2015年
済生会神奈川県病院、横浜岡野町クリニック、上大岡仁正クリニック、仁厚会病院勤務

日本外科学会 専門医・指導医
日本脈管学会 脈管専門医
日本消化器外科学会 認定医
日本血管外科学会認定血管内治療医
下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医
腹部ステントグラフト実施認定医・指導医

済生会神奈川県病院、横浜岡野町クリニック、上大岡仁正クリニック、仁厚会病院勤務 林先生のインタビューを掲載いたします。
下肢静脈瘤に対する漢方の臨床的有用性を語っていただきました。

インタビュー
「下肢静脈瘤に対する漢方の臨床的有用性」

 血管外科で扱う疾患は多岐にわたりますが、頻度の高い疾患の一つに下肢静脈瘤があります。

本日は下肢静脈瘤を中心とした血管外科領域の漢方薬治療として、桂枝茯苓丸料、五苓散料、芍薬甘草湯、柴苓湯を中心に臨床的有用性のお話を伺いました。

[ インタビュー日:2015年10月8日 ]

最近「下肢静脈瘤」という疾患をよく耳にしますが、この疾患について教えていただけますか?

 下肢静脈瘤は、下肢表在静脈の弁不全が原因で血液の逆流が起こり、静脈が拡張・蛇行した状態となる疾患です。発症には遺伝的素因が大きく関与していますが、長時間の立ち仕事や、女性では妊娠・出産も誘因となります。

 我が国の有病率は約9%、患者数は約1,000万人以上と推定されています。性別では女性に多いと言われています。下肢静脈瘤は良性疾患であり、生命に直接的な危険が及ぶことはないものの、進行すると足の倦怠感、しびれ、冷え、浮腫、こむら返りなど様々な自覚症状が出現し、患者さんのQOLが大きく損なわれる原因になります。

 また、血栓性静脈炎を合併し、発赤、硬結、熱感、疼痛を訴えるケースもあります。さらに重症化すると湿疹、皮膚炎、色素沈着、脂肪皮膚硬化症などを呈するようになります。

下肢静脈瘤の一般的な治療法についてご教示ください。また、先生の治療方針における漢方薬の位置づけを教えてください。

 下肢静脈瘤の治療は、保存的治療と積極的治療の2つに大きく分類されます。保存的治療は弾性ストッキングによる圧迫療法で、すべての下肢静脈瘤の患者さんに適応となります。弾性ストッキングは症状緩和や軽症例の進行予防には有効ですが、根本的な治療ではありません。下肢静脈瘤を根治するには、硬化療法、ストリッピング手術、レーザー治療などの積極的治療により、弁不全の生じている静脈を閉塞・抜去・焼灼することが必要です。いずれにせよ、下肢静脈瘤は一度発症すると自然によくなることはありません。

 私が下肢静脈瘤治療で漢方薬を使用する目的は、随伴する諸症状の軽減です。経過観察中の患者さんや、外科的治療が困難あるいは拒否される患者さんの初期治療に、圧迫療法と併用で、QOLを考慮し漢方薬による薬物療法を行っています。また、術後もなお不定愁訴が残存したり症状が再燃した場合にも、症状緩和という観点からは漢方薬が有効と考えています。

先生はこの「下肢静脈瘤」の薬物治療において漢方薬をよく使用されるとのことですが、どのような漢方薬をお使いになられますか?

 私は、患者さんが訴える症状や所見に応じて漢方処方を選択しています(表)。倦怠感やしびれには桂枝茯苓丸、浮腫が顕著であれば五苓散、こむら返りには芍薬甘草湯を用いています。血栓性静脈炎合併例など、疼痛や炎症所見が顕著な場合は柴苓湯が有効であると考えています。

(表)
表1

外科的処置に漢方薬を併用されるメリットをご教示いただけないでしょうか?

 外科における漢方治療の有用性は、自覚症状改善度ならびに患者満足度の高さにあると感じています。私の感触では漢方薬の奏功率は70~80%です。有効であった患者さんからは、こちらが意外なほど高い評価を得られることも少なくなく、西洋医学的治療のみでは得られない、自覚症状に重きをおく漢方治療特有の効果であると感じています。

 現在の下肢静脈瘤治療のスタンダードがストリッピング手術やレーザー治療等の外科的治療であることは言うまでもありませんが、外科的治療の非適応症例や拒否例、治療待機期間中の患者、外科的治療後もなお不定愁訴が残るケース等では、患者QOL改善のために、漢方薬の投与も治療オプションの1つとなり得るでしょう。

その他、血管外科領域で漢方薬をお使いになられるケースについて教えていただけますか?

 私は日常臨床において、下肢静脈瘤以外にも静脈血栓症(VTE)や、末梢動脈疾患(PAD)などに伴う諸症状にも漢方薬を使用しています。また、血管外科では下肢の浮腫を診る機会が非常に多いのですが、足のむくみに漢方薬を用いることもあります。

 足のむくみは下肢静脈瘤をはじめとする血管疾患に伴うもののみならず、月経前のプロゲステロン増加や加齢に伴う脚の筋力低下等によるもの、肝・腎・心臓病等の疾患が背景にあるものなど原因は実に様々です。ときに西洋薬治療の無効例にも遭遇しますが、そのような場合でも漢方薬が奏功するケースがあります。

現在、漢方薬は多くの医師より処方されておりますが、先生のご専門領域において今後漢方薬に期待されることがあれば教えていただけますか?

 私が期待するのはエビデンスの確立です。医師の大多数は西洋医学ベースであり、より多くの医師が漢方薬の有用性を認めるにはエビデンスの確立が不可欠です。私自身もこれまでに漢方薬の臨床研究を数多く行ってきましたが、今後もRCTを含め、よりエビデンスレベルの高い報告ができるよう努めたいと考えています。

臨床研究報告

  • 桂枝茯苓丸の臨床報告 下肢静脈瘤に伴う不定愁訴に対する桂枝茯苓丸の臨床的有用性の検討
    桂枝茯苓丸の臨床報告
    下肢静脈瘤に伴う不定愁訴に対する桂枝茯苓丸の臨床的有用性の検討

    林 忍 先生
    済生会横浜市東部病院

    品番:
    GR-089
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2013年8月
    PDF 3.2MB

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