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臨床医師へのインタビュー十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)

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インタビュー

野本 真由美 先生

野本真由美スキンケアクリニック
院長 野本 真由美 先生
(インタビュー日:2015年12月14日)

profile

1998年 3月
信州大 学医学部卒業
1998年 4月
新潟大学医学部付属病院皮膚科勤務
2006年 3月
同退職
2006年 4月
美容皮膚科の勉強のため、米国留学
2007年 6月
野本真由美スキンケアクリニック開院

日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
日本抗加齢医学会専門医
日本東洋学会認定 漢方専門医

野本真由美スキンケアクリニック 野本院長のインタビューを掲載いたします。
尋常性痤瘡(ニキビ)治療に対する十味敗毒湯とBPO製剤の上手な使い方について語っていただきました。

インタビュー
「尋常性痤瘡(ニキビ)治療に対する十味敗毒湯とBPO製剤の上手な使い方」

 野本真由美先生は「美容皮膚科学」、「抗加齢医学」、「漢方医学」を3本の柱として、最新の美容皮膚科治療に加えて、漢方薬による治療を行われています。2015年春より尋常性痤瘡(以下、痤瘡)に保険適応となった過酸化ベンゾイル(BPO)については、十味敗毒湯との併用療法を実践されています。十味敗毒湯は化膿性皮膚疾患に適応があり、痤瘡、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さなどに応用されている処方です。本日は、痤瘡治療における十味敗毒湯とBPOの併用療法を中心にお話を伺いました。

[ インタビュー日:2015年12月14日 ]

現代女性に多い痤瘡の原因と治療について教えてください。

 当院では思春期を過ぎた女性の痤瘡患者さんが多数受診されます。痤瘡はありふれた疾患ですが、その原因としては食事、ストレス、外的刺激など種々の因子が影響するため、アダパレンや抗菌薬外用をはじめとする治療薬だけでは改善がみられないことがあります。

 現代女性の痤瘡の特徴としては、痤瘡の個数だけでみると10個未満と決して多くはないのですが、こうした標準治療で上手くいかない難治な例が多いです。原因としては、不適切なスキンケア・メイクの使用や、女性のライフスタイルの変化に伴うホルモンバランスの乱れ、酸化ストレスの増加などがあります。

 このため、徹底したスキンケア・メイク指導と、ホルモンバランスや酸化ストレスにアプローチできる漢方薬の内服、主に桜皮配合の十味敗毒湯を治療に併用することが多いです。

桜皮配合の十味敗毒湯を使用される理由について教えてください。

 十味敗毒湯は、江戸時代の外科医である華岡青洲によって作られた方剤です。この名が示すように、10種類の生薬を用いて毒素を排出させることを目的に考案されました。その際に、「桜皮(ヤマザクラの樹皮)」は排膿作用を強めるために配合したとされます。その後、浅田宗伯は桜皮を「樸樕(クヌギの樹皮)」に代えたため、現在の医療用漢方製剤には製薬企業により「桜皮」配合のエキス剤と、「樸樕」配合のエキス剤が存在しています。

 私が十味敗毒湯に興味を持つきっかけとなったのは、桜皮が皮膚の線維芽細胞のエストロゲン受容体βと結合して、エストロゲン様作用を示すという研究報告※1です。痤瘡の発症メカニズムには、テストステロンが大きく関与していることが分かっており、特に月経前の痤瘡の悪化はテストステロンの影響が強いとされます。これに拮抗的に働くのがエストロゲンです。

 これまで十味敗毒湯の作用機序は、荊芥、甘草などの生薬が持つアクネ菌に対する抗菌作用※2が主と考えられていましたが、桜皮配合の十味敗毒湯は皮膚局所でのエストロゲン様作用(図1)により、現代女性の痤瘡の原因となるホルモンバランスの乱れに対しても有効であると考えています。

図1. 桜皮配合の十味敗毒湯の推定される作用機序
図1

十味敗毒湯と外用薬の併用投与についてはどのようにお考えでしょうか?

 十味敗毒湯とBPOの併用投与が有用であると考えています。2015年春、日本でもBPOを使用した痤瘡治療が保険適応となりました。欧米ではすでに50年以上前から使用されている治療薬ですが、先進国の中では唯一、日本で導入されておらず、長年認可が待たれていました。BPOは強力な酸化剤であり、分解により生じた活性酸素がアクネ菌に対して強い抗菌力を発揮します。この作用機序から、BPOは耐性菌を生じにくく、痤瘡の維持療法としても使用を継続しやすいです。その他にも角層剥離作用を有するため、毛包漏斗部の貯留角化を改善する効果があります。一方で、その酸化作用により、外用初期に適用部位の皮膚剥脱、紅斑、刺激感等の副作用を生じやすく、治療の妨げとなることがあります。

 欧米の論文ではBPOによる適応部位への副作用は数%程度と記載されているものが多いですが、国内の12週間の治験データでは37.3%と高いのが現状です※3。このため、皮膚の刺激を感じやすい日本人の皮膚に適したBPOの使用方法を考えていく必要があります。

 BPOをうまく使いこなすには、外用初期に起こる皮膚の刺激症状をどうコントロールするかが大切です。BPOの外用は患部のみから開始して、皮膚の刺激が治まってから徐々に塗布面積を広げていくと使いやすいです。さらにもう一つ、十味敗毒湯を内服することで、BPOによる皮膚の刺激症状を軽減することができると感じています。

日本ならではのBPOの使い方として十味敗毒湯との併用療法を実践されているのですね。実際の臨床成績をご紹介いただけますか。

 2015年4月に当院を受診し、尋常性痤瘡と診断されBPOを3週間外用した女性患者16例を対象に後ろ向き調査を行いました※4。クラシエ十味敗毒湯エキス細粒6.0g/日をBPO外用開始前より服用していた患者11例が含まれます。十味敗毒湯併用群11例と、BPO単独群5例の二群に分け、炎症性皮疹数、非炎症性皮疹数、顔の赤みスコアはBPO外用前後、痤瘡の治療満足度はBPO外用後に調査し、両群間の統計解析を行いました。

 結果として、十味敗毒湯併用群では、顔の赤みスコアはBPO外用前後で有意な低下が認められました。一方、BPO単独群では、BPO外用前後で有意な変化は認められませんでした(図2)。BPO外用前後の顔の赤みスコアの変化量では、十味敗毒湯併用群はBPO単独群と比較して有意な赤みの減少が認められました(図3)。痤瘡治療に対する治療満足度スコアは、十味敗毒湯併用群ではBPO単独群と比較して有意に高いスコアが認められました(図4)。

 炎症性皮疹数については、十味敗毒湯併用群では、外用前10±7個から外用後4±7個、BPO単独群では、外用前7±3個から外用後3±2個とそれぞれ有意な減少が認められました。非炎症性皮疹数については、十味敗毒湯併用群では外用前6±8個から外用後3±3個と有意な減少が認められ、BPO単独群では、外用前3±1個から外用後3±4個と有意な変化は認められませんでした。

図2. 顔の赤みスコアの推移
図2

図3. 顔の赤みスコアの変化量
図3

図4. 治療満足度スコア(VAS)
図4

臨床成績のご紹介ありがとうございます。十味敗毒湯はどのような作用でBPOの皮膚の刺激症状を軽減したとお考えでしょうか?

 十味敗毒湯の2つの作用が関与したと考えています。一つは皮膚炎の改善作用※5により、BPOで生じた一時刺激性接触皮膚炎を抑制している可能性があることです。

 もう一つは抗酸化作用※6により、BPOの抗酸化作用を高めている可能性があることです。BPOは酸化剤である一方で、P.acnesの減少による白血球由来の活性酸素放出を抑制する抗酸化作用があることが知られています。

最後に今後、漢方薬に期待されていることがあれば教えてください。

 漢方薬の作用機序については未だ不明な点が多いですが、少しずつ解明も進んでいます。桜皮配合の十味敗毒湯のエストロゲン様作用のように、漢方薬がなぜ効くのか、今後も新たな作用機序が発見されることを期待しています。

【参考文献】
  1. 遠野弘美 ほか: 桜皮及び桜皮成分のエストロゲン受容体β結合能の評価, 薬学雑誌, 130(7): 989-997, 2010
  2. Higaki S, et al: Activity of Eleven Kampo Formulations and Eight Kampo Crude
  3. 川島 眞 ほか: 過酸化ベンゾイルゲルの尋常性痤瘡を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験, 臨床医薬 30(8): 651-668, 2014
  4. 野本真由美: 過酸化ベンゾイルと十味敗毒湯の併用投与による効果の検討, phil漢方,   57:18-19, 2015
  5. 羽白 誠 ほか: アトピー性皮膚炎患者の皮膚症状に対する十味敗毒湯の効果-皮疹要素別の検討-, 皮膚の科学, 10(1): 34-40, 2011
  6. 中西孝文 ほか: 十味敗毒湯における抗酸化能の解析, 漢方と最新治療 20(1): 89-91, 2011

臨床研究報告

  • 尋常性痤瘡治療における十味敗毒湯の桜皮配合の意義
    尋常性痤瘡治療における十味敗毒湯の桜皮配合の意義

    遠野 弘美 他
    クラシエ製薬株式会社 漢方研究所

    品番:
    GR-105
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2014年12月
    PDF 1.28MB
  • 十味敗毒湯の臨床研究報告 女性の尋常性痤瘡患者に対する十味敗毒湯の効果
    十味敗毒湯の臨床研究報告
    女性の尋常性痤瘡患者に対する十味敗毒湯の効果

    竹村 司 先生
    志木駅前皮膚科 院長

    品番:
    GR-038
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2009年4月
    PDF 528KB
  • 化膿性皮膚疾患(尋常性痤瘡)に対する十味敗毒湯の作用機序の検討
    化膿性皮膚疾患(尋常性痤瘡)に対する十味敗毒湯の作用機序の検討

    遠野 弘美 他
    クラシエ製薬株式会社 漢方研究所

    品番:
    GR-047
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2012年5月
    PDF 315KB
  • 十味敗毒湯の臨床研究報告 炎症性皮疹を伴う尋常性痤瘡に対する 十味敗毒湯の有用性の検討
    十味敗毒湯の臨床研究報告
    炎症性皮疹を伴う尋常性痤瘡に対する 十味敗毒湯の有用性の検討検討

    弓立 達夫 先生
    弓立皮膚科

    品番:
    GR-084
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2013年3月
    PDF 1.5MB
  • 十味敗毒湯の臨床研究報告 尋常性痤瘡に対する十味敗毒湯(錠剤)の有用性
    十味敗毒湯の臨床研究報告
    尋常性痤瘡に対する十味敗毒湯(錠剤)の有用性

    飯室 諭 先生
    飯室皮膚科

    品番:
    GR-070
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2012年8月
    PDF 2.3MB

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