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臨床医師へのインタビュー十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)

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インタビュー

竹村 司 先生

医療法人社団智徳会
志木駅前皮膚科 院長 竹村 司 先生
(インタビュー日:2015年4月15日)

profile

1960年
日本大学医学部卒
1966年
日大皮膚科学教室医局長
1971年
大宮赤十字病院皮膚科部長
2001年
志木駅前皮膚科院長 現在に至る

日臨皮南関東山静支部長
埼玉県皮膚科医会会長
埼玉県皮膚科治療学会会長
埼玉県社会保険皮膚科主任審査員、他

医療法人社団智徳会 志木駅前皮膚科 竹村院長のインタビューを掲載いたします。
尋常性痤瘡(ニキビ)治療における十味敗毒湯の臨床的有用性を語っていただきました。

インタビュー
「尋常性痤瘡(ニキビ)治療における十味敗毒湯の臨床的有用性」 ―桜皮配合の意義について―

 2008年にアダパレンが上市されてから7年、2015年はBPO製剤が上市され、抗生物質中心であったわが国の尋常性痤瘡治療も少しずつ変わってきており、日本皮膚科学会が提唱する尋常性痤瘡治療ガイドラインも2016年に改訂されました。

 2014年に桜皮を配合した十味敗毒湯の新しい作用機序について西日本皮膚科に論文が掲載された竹村司先生は、50余年にわたる皮膚科医としてのご経験から、日常診療の中にこそ大事な情報が隠されており、日々の診療で如何に患者の声に耳を傾けるかが新たな治療への近道であると教えてくださいました。

 本日は尋常性痤瘡の薬物療法とともに、十味敗毒湯の新しい作用機序の発見に伴うお話を伺いました。

[ インタビュー日:2015年4月15日 ]
[ 一部改変:2016年12月 ]

はじめに尋常性痤瘡治療ガイドライン(2016年)の概要と十味敗毒湯の位置づけについて教えてください。

 プライマリケアを担う一般診療所において尋常性痤瘡は非常にありふれた疾患です。わが国でも2008年にアダパレン、2015年に過酸化ベンゾイルが上市され、製薬会社による疾患啓蒙などが行なわれたことにより、痤瘡治療を目的に来院する患者も増えたように感じます。

 尋常性痤瘡治療ガイドライン(2016年)※1では、維持療法と薬剤耐性菌回避のための抗菌薬治療の一層の適正化対策を推進し、さらなる治療レベルの向上を目指すことを掲げています。

 治療アルゴリズムとしては、痤瘡を急性炎症期と維持期に分類し、維持期においては耐性菌誘導の懸念のない薬剤を選択することとしています。急性炎症期の炎症性皮疹には過酸化ベンゾイル、アダパレン、外用抗菌剤、一部の内服抗菌薬が推奨度A(行うよう強く推奨する)、面皰には過酸化ベンゾイル、アダパレンのみが推奨度Aとされています。

漢方製剤は炎症性皮疹および面皰に関して、荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯など数種類が記載されています。十味敗毒湯は炎症性皮疹ではC1(選択肢の1つとして推奨する)、面皰ではC2(十分な根拠がないので(現時点では)推奨しない)に分類されており、高い評価を得ている薬剤とは言いがたい状態です。

竹村先生が桜皮を配合した十味敗毒湯を使用されるきっかけとなった出来事を教えてください。

 もともと私は漢方の専門医ではないため、西洋医学的な治療で困ったときにだけ漢方薬も使ってみるという程度でした。十味敗毒湯についてもたまに著効例が出ることがあるくらいの認識でしかありませんでした。
2008年頃に縁あって桜皮配合の十味敗毒湯を初めて使ったところ、後述しますが、これが大変良く効きました。24歳の女性で中等度の痤瘡でしたが、外用抗菌薬と十味敗毒湯の内服だけで、2ヶ月ほどですっかり治癒してしまったのです。その後も経過の思わしくない女性の尋常性痤瘡患者に次々と使用したところ、明らかに以前に使用していた十味敗毒湯と効果が違うことに気づきました。

線維芽細胞に桜皮エキスを添加した際の17β-エストラジオール産生量
図1.

 この当時私は、十味敗毒湯の構成生薬がメーカーによって異なることを知りませんでしたが、後に同じ十味敗毒湯でもメーカーによって配合される生薬が「桜皮(日局オウヒ:ヤマザクラの樹皮)」と「樸樕(日局ボクソク:クヌギの樹皮)」の2種類があることを知りました。

 臨床の感触にこれほどの違いがみられるのには何か理由があるはずだと考え、MRの方に調べてもらったところ、桜皮エキスには皮下線維芽細胞でのエストロゲン産生誘導作用があること※2が分かりました(図1)。全身のホルモン動態に影響を与えるほどではないようですが、微量でも皮膚局所でエストロゲンが産生されるのであれば、痤瘡治療に有効であることも十分に頷けます。

 またその後の研究により、桜皮エキスには5α-リダクターゼの阻害活性やリパーゼの産生抑制、SOD様活性なども確認※3されており、以前より知られていた荊芥、甘草などのアクネ菌に対する抗菌作用などと併せて、尋常性痤瘡に効果を示すことが分かってきています(図2)。

基礎研究で明らかとなった桜皮の主な作用点
図2.
竹村先生の臨床家としてのご経験と治療に対する真摯な姿勢が、薬剤の新たな作用機序の発見につながったのですね。実際の臨床成績をご紹介いただけますか。

 中等度以上を中心とした女性の尋常性痤瘡患者44名に対し、桜皮配合の十味敗毒湯内服と外用抗菌薬(クリンダマイシンリン酸エステル)で12週間の治療を行ったところ、紅色丘疹、白色丘疹、膿疱などの症状に投与2週後より経時的な改善が認められました(図3)。皮膚所見の改善度は著明改善68.2%、改善9.0%で、改善以上の累積改善率は77.3%でした。また、調査期間を通して調査薬剤に起因すると思われる副作用は認められませんでした※4。桜皮を配合した十味敗毒湯と外用抗菌薬の併用は、抗菌薬の内服をすることなく中等度以上の尋常性痤瘡にも有効であることが示唆されました。

十味敗毒湯の臨床効果
図3.
十味敗毒湯が有効と思われる患者層はどのような方でしょうか?

 年齢に関係なく有効性は高いと思われますが、とりわけ罹病期間の長い思春期後の尋常性痤瘡患者での有用性は高いと思われます。30歳代以降の女性では口の周りなどの炎症性皮疹がなかなか取れず、しかも再発しやすい難治な痤瘡に悩まされる患者がたくさんいます。内服の抗菌薬を使わざるを得ないと思われる症例には一度使用する価値はあると思います。

 また一定期間(4週間程度)、十味敗毒湯を使用しても効果が十分上がらない患者に対して、1.5倍の増量投与を行なうことがあります。桜皮配合の十味敗毒湯は6.0g/日の分2製剤を用いることが多いのですが、これを1日3回(9.0g/日、分3)に増量してみると、さらに改善効果がある場合があります※5。増量する際は診断時に必ず治療上の必要性を確認する必要がありますが、難治と判断される症例では増量も選択肢の一つとして考慮すべきでしょう。

これまで女性患者への効果を報告されて来られましたが、男性患者に対しては如何でしょうか?

 男性患者を対象とした検討は行なっておりませんが、日常臨床の感触として一定の手ごたえは感じています。女性患者と比べて数が少なくまた患者自身が治療に向き合う意識も低いため効果を確認しづらいのですが、他の漢方製剤より桜皮配合の十味敗毒湯は有効であると考えています。

最後にこれからの痤瘡治療における漢方薬への期待などお聞かせください。

 漢方薬は西洋医学とは異なったパラダイムで処方が決定される独自の治療システムがあり、皮膚科の専門医にとっては敬遠されがちな治療薬かもしれません。先ほども申し上げたとおり私自身も漢方の専門医ではありませんが、桜皮を配合した十味敗毒湯に関しては、特別な漢方のトレーニングを受けた医師でなくとも現代医学的な観点から十分に使える医薬品だと思っています。

 BPO製剤の上市によってわが国の尋常性痤瘡治療は一通りのラインナップを揃えました。十味敗毒湯は華岡青洲先生が創薬された日本生まれの漢方薬で、医師が医療保険の適応で使えるのは世界でも日本だけです。私たちは恵まれた環境にいることをもっと自覚し、患者さん本位の治療を通じて社会に貢献していかなければならないと思います。

【参考文献】
  1. 林 伸和, 赤松 浩彦, 岩月 啓氏, 他. 日皮会誌 126(6): 1045-1086, 2016
  2. 遠野 弘美, 堀井 周文, 布施 貴史, 他. 薬学雑誌 130: 989-997, 2010
  3. 遠野 弘美, 与茂田 敏, 竹村 司. 別冊BIO Clinica 3(2): 124-131, 2014
  4. 竹村 司, 遠野 弘美. 西日本皮膚科 76(2): 140-146, 2014
  5. 竹村 司. phil漢方 34: 18-19, 2011

臨床研究報告

  • 尋常性痤瘡治療における十味敗毒湯の桜皮配合の意義
    尋常性痤瘡治療における十味敗毒湯の桜皮配合の意義

    遠野 弘美 他
    クラシエ製薬株式会社 漢方研究所

    品番:
    GR-105
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2014年12月
    PDF 1.28MB
  • 十味敗毒湯の臨床研究報告 女性の尋常性痤瘡患者に対する十味敗毒湯の効果
    十味敗毒湯の臨床研究報告
    女性の尋常性痤瘡患者に対する十味敗毒湯の効果

    竹村 司 先生
    志木駅前皮膚科 院長

    品番:
    GR-038
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2009年4月
    PDF 528KB
  • 化膿性皮膚疾患(尋常性痤瘡)に対する十味敗毒湯の作用機序の検討
    化膿性皮膚疾患(尋常性痤瘡)に対する十味敗毒湯の作用機序の検討

    遠野 弘美 他
    クラシエ製薬株式会社 漢方研究所

    品番:
    GR-047
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2012年5月
    PDF 315KB
  • 十味敗毒湯の臨床研究報告 炎症性皮疹を伴う尋常性痤瘡に対する 十味敗毒湯の有用性の検討
    十味敗毒湯の臨床研究報告
    炎症性皮疹を伴う尋常性痤瘡に対する 十味敗毒湯の有用性の検討検討

    弓立 達夫 先生
    弓立皮膚科

    品番:
    GR-084
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2013年3月
    PDF 1.5MB
  • 十味敗毒湯の臨床研究報告 尋常性痤瘡に対する十味敗毒湯(錠剤)の有用性
    十味敗毒湯の臨床研究報告
    尋常性痤瘡に対する十味敗毒湯(錠剤)の有用性

    飯室 諭 先生
    飯室皮膚科

    品番:
    GR-070
    サイズ:
    A4 4P
    作成年月:
    2012年8月
    PDF 2.3MB

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