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臨床医師へのインタビュー「十味敗毒湯」
尋常性ざ瘡(ニキビ)治療における漢方の臨床的有用性
―桜皮配合の意義についてー

医療法人社団智徳会 志木駅前皮膚科 院長 竹村 司 先生

2008年にアダパレンが上市されてから7年、2015年はBPO製剤が上市され、抗生物質中心であったわが国の尋常性ざ瘡治療も少しずつ変わってきており、日本皮膚科学会が提唱する尋常性ざ瘡治療のガイドラインも改訂が予定されています。


2014年に桜皮を配合した十味敗毒湯の新しい作用機序について西日本皮膚科に論文が掲載された竹村司先生は、50余年にわたる皮膚科医としてのご経験から、日常診療の中にこそ大事な情報が隠されており、日々の診療で如何に患者の声に耳を傾けるかが新たな治療への近道であると教えてくださいました。


本日は尋常性ざ瘡の薬物療法とともに、十味敗毒湯の新しい作用機序の発見に伴うお話を伺いました。

[ インタビュー日:2015年4月15日 ]

はじめに尋常性ざ瘡治療のガイドライン(2008年)の概要と十味敗毒湯の位置づけについて教えてください。

プライマリケアを担う一般診療所において尋常性ざ瘡は非常にありふれた疾患です。特に2008年にわが国でもアダパレンが上市され、製薬会社による疾患啓蒙などが行なわれたことにより、ざ瘡治療を目的に来院する患者も増えたように感じます。


尋常性ざ瘡治療のガイドライン(2008年)では、主たる皮疹を面皰、丘疹・膿疱、嚢腫・硬節、瘢痕・ケロイドに分類し、丘疹・膿疱についてはその重症度を軽症、中等症、重症、最重症の4段階に分けています。

面皰で推奨度A(行なうよう強く推奨する)に該当する治療法はアダパレンによる薬物療法のみであり、他の薬物や治療法については推奨度C1(良質な根拠は少ないが、選択肢の一つとして推奨する)以下の扱いとなっています。また丘疹・膿疱は重症度に拠らず抗菌薬の外用が推奨度Aであり、軽症~重症まではアダパレンが、中等症から最重症までは抗菌薬の内服が推奨度Aに分類されていますが、それ以外の治療法はいずれも推奨度C1以下とされています。


漢方製剤は面皰および丘疹・膿疱の軽症に関して、荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯など数種類が記載されています。十味敗毒湯は面皰ではC2(十分な根拠がないので(現時点では)推奨できない)、丘疹・膿疱の軽症ではC1に分類されており、決して高い評価を得ている薬剤とは言いがたい状態です。

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竹村先生が桜皮を配合した十味敗毒湯を使用されるきっかけとなった出来事を教えてください。

もともと私は漢方の専門医ではないため、西洋医学的な治療で困ったときにだけ漢方薬も使ってみるという程度でした。十味敗毒湯についてもたまに著効例が出ることがあるくらいの認識でしかありませんでした。

2008年頃に縁あって桜皮配合の十味敗毒湯を初めて使ったところ、後述しますが、これが大変良く効きました。24歳の女性で中等度のざ瘡でしたが、外用抗菌薬と十味敗毒湯の内服だけで、2ヶ月ほどですっかり治癒してしまったのです。 その後も経過の思わしくない女性の尋常性ざ瘡患者に次々と使用したところ、明らかに以前に使用していた十味敗毒湯と効果が違うことに気づきました。

図1.

 

この当時私は、十味敗毒湯の構成生薬がメーカーによって異なることを知りませんでしたが、後に同じ十味敗毒湯でもメーカーによって配合される生薬が「桜皮(日局オウヒ:ヤマザクラの樹皮)」と「樸樕(日局ボクソク:クヌギの樹皮)」の2種類があることを知りました。

 

臨床の感触にこれほどの違いがみられるのには何か理由があるはずだと考え、MRの方に調べてもらったところ、桜皮エキスには皮下線維芽細胞でのエストロゲン産生誘導作用があること※1が分かりました(図1)。全身のホルモン動態に影響を与えるほどではないようですが、微量でも皮膚局所でエストロゲンが産生されるのであれば、ざ瘡治療に有効であることも十分に頷けます。


またその後の研究により、桜皮エキスには5α-リダクターゼの阻害活性やリパーゼの産生抑制、SOD様活性なども確認※2されており、以前より知られていた荊芥、甘草などのアクネ菌に対する抗菌作用などと併せて、尋常性ざ瘡に効果を示すことが分かってきています(図2)。


図2.

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竹村先生の臨床家としてのご経験と治療に対する真摯な姿勢が、薬剤の新たな作用機序の発見につながったのですね。実際の臨床成績をご紹介いただけますか。

中等度以上を中心とした女性の尋常性ざ瘡患者44名に対し、桜皮配合の十味敗毒湯内服と外用抗菌薬(クリンダマイシンリン酸エステル)で12週間の治療を行ったところ、紅色丘疹、白色丘疹、膿疱などの症状に投与2週後より経時的な改善が認められました(図3)。皮膚所見の改善度は著明改善68.2%、改善9.0%で、改善以上の累積改善率は77.3%でした。また、調査期間を通して調査薬剤に起因すると思われる副作用は認められませんでした※3。桜皮を配合した十味敗毒湯と外用抗菌薬の併用は、抗菌薬の内服をすることなく中等度以上の尋常性ざ瘡にも有効であることが示唆されました。

図3.

 

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十味敗毒湯が有効と思われる患者層はどのような方でしょうか?

年齢に関係なく有効性は高いと思われますが、とりわけ罹病期間の長い思春期後の尋常性ざ瘡患者での有用性は高いと思われます。30歳代以降の女性では口の周りなどの炎症性皮疹がなかなか取れず、しかも再発しやすい難治なざ瘡に悩まされる患者がたくさんいます。内服の抗菌薬を使わざるを得ないと思われる症例には一度使用する価値はあると思います。


また一定期間(4週間程度)、十味敗毒湯を使用しても効果が十分上がらない患者に対して、1.5倍の増量投与を行なうことがあります。桜皮配合の十味敗毒湯は6.0g/日の分2製剤を用いることが多いのですが、これを1日3回(9.0g/日、分3)に増量してみると、さらに改善効果がある場合があります※4。増量する際は診断時に必ず治療上の必要性を確認する必要がありますが、難治と判断される症例では増量も選択肢の一つとして考慮すべきでしょう。

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これまで女性患者への効果を報告されて来られましたが、男性患者に対しては如何でしょうか?

男性患者を対象とした検討は行なっておりませんが、日常臨床の感触として一定の手ごたえは感じています。女性患者と比べて数が少なくまた患者自身が治療に向き合う意識も低いため効果を確認しづらいのですが、他の漢方製剤より桜皮配合の十味敗毒湯は有効であると考えています。

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最後にこれからのざ瘡治療における漢方薬への期待などお聞かせください。

漢方薬は西洋医学とは異なったパラダイムで処方が決定される独自の治療システムがあり、皮膚科の専門医にとっては敬遠されがちな治療薬かもしれません。先ほども申し上げたとおり私自身も漢方の専門医ではありませんが、桜皮を配合した十味敗毒湯に関しては、特別な漢方のトレーニングを受けた医師でなくとも現代医学的な観点から十分に使える医薬品だと思っています。

BPO製剤の上市によってわが国の尋常性ざ瘡治療は一通りのラインナップを揃えました。十味敗毒湯は華岡青洲先生が創薬された日本生まれの漢方薬で、医師が医療保険の適応で使えるのは世界でも日本だけです。私たちは恵まれた環境にいることをもっと自覚し、患者さん本位の治療を通じて社会に貢献していかなければならないと思います。


【参考文献】
※1 遠野 弘美, 堀井 周文, 布施 貴史, 他. 薬学雑誌 130: 989-997, 2010
※2 遠野 弘美, 与茂田 敏, 竹村 司. 別冊BIO Clinica 3(2): 124-131, 2014
※3 竹村 司, 遠野 弘美. 西日本皮膚科 76(2): 140-146, 2014
※4 竹村 司. phil漢方 34: 18-19, 2011


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